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生物機能材料研究室

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新潟大学工学部 工学科 材料科学プログラム 田中 孝明 研究室
(工学部 機能材料工学科)
総合研究棟(物質・生産棟)3階
Phone: 025-262-7495; e-mail:

目標: 高性能生物機能材料の開発と応用

 生物の特性(高度な分子認識能力,環境との調和性)を生かした機能性材料の開発と応用を研究目標としています。応用生物学を基盤としていますが,目標達成のために,化学・物理学・工学・情報学も取り入れていきたいと思います。
 特に密接に関連している学問分野は,生物化学工学( -> Go)生物材料工学( -> Go)生体触媒工学( -> Go)です。
 国内外の研究者との共同研究も行っています。
 企業からいただいた貴重なサンプルを教育・研究に活用させていただいております。

生物化学工学

( -> 生物化学工学に関する研究論文)
 生物化学工学は生物機能材料の生産や利用の最適化に役立つ工学です。
 生物反応工学(酵素反応や微生物・動植物細胞による生産の収率や生産速度の解析。生体触媒工学とも密接に関連する )と生物分離工学(生産されたバイオ生産物の分離精製技術〔膜分離,クロマトグラフィーなど〕の効率化,高精度化)とが2本柱です。
 田中研究室では,微生物による生理活性物質の生産バイオプロセスにおける分離工学について研究しています。
( -> 論文・著書・総説・解説[新潟大学研究者総覧「研究活動」へ])
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生物材料工学

( -> 生物材料工学に関する研究論文)
 生物材料は,植物の光合成により作られる炭水化物を最初の原料としています。また,堆肥化のプロセスで微生物による分解が可能です。適切に利用すれば,石油・石炭などの化石資源の使用が削減できるため,産業活動による,難分解性廃棄物および二酸化炭素の排出削減が可能です。
 また,ポリ乳酸などの一部の生分解性プラスチックは生体内で分解・吸収される生体吸収性材料であるため,薬物送達システム(DDS)や再生医療のための医療用材料としても注目されています。
 田中研究室では,現在,生分解性プラスチック(ポリ乳酸,ポリブチレンサクシネート,ポリカプロラクトン,ポリヒドロキシ酪酸など)に注目し,多孔質分離膜や微粒子の作製方法の研究を行っています。
 現在は石油の価格が安いため,生分解性プラスチックはポリエチレンなどと比較すると高価です。付加価値の高い,高機能材料を開発することにより,環境調和型材料である生分解性プラスチックの有効利用を目指しています。

(解説PDFファイル 「生分解性プラスチックを機能材料へ」)

( -> 論文・著書・総説・解説[新潟大学研究者総覧「研究活動」へ])

ポリ乳酸製 分離膜の開発

 生分解性プラスチックの一種,ポリ乳酸は包装材料や自動車部品,電子機器のケースなどに利用され始めています。
 当研究室ではポリ乳酸の高度な利用を目指し,米国テキサス大学との共同研究により,多孔質分離膜(ポリ乳酸膜)の開発に成功しました。


 ポリ乳酸(左上図)を80 ℃で溶媒に溶解した後,型の中で0 ℃まで冷却します。すると,ポリマー相と溶媒相に相分離し,右上図の走査型電子顕微鏡写真(断面図)のような多孔質分離膜を作製できました。このような製膜方法を熱誘起相分離法とよびます。高分子溶液の熱力学の,生物機能材料の開発への応用例です。


 非溶媒誘起相分離法で作製したポリ乳酸膜です。指状孔構造を有する非対称膜が作製できました。
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生体触媒工学

( -> 生体触媒工学に関する研究論文)
 生体触媒である,酵素,微生物,動植物細胞を利用して,有用物質生産を行うための工学です。
 高性能な生体触媒の開発とその効率的な利用技術を研究します。
 酵素を例にすると,極めて分子認識能力が高い(基質特異性の高い)酵素や,幅広い化合物に作用が可能な酵素があります。これらの酵素を反応条件(pH,温度など)を最適化して,適材適所で利用します。
 田中研究室では,現在,酸化酵素ラッカーゼを利用したフェノール類の酸化反応について研究しています。ラッカーゼは安全な水中の酸素を酸化剤として利用し,フェノール部分を特異的に酸化します。電極と組み合わせることにより,電気回路との電子の授受も可能です(バイオセンサ)。
 ラッカーゼを用いると,天然の生分解性高分子リグニンと類似の分子構造をもつ高分子材料であるポリメトキシフェノール類も,有毒な過酸化水素や有機溶媒を用いずに合成できます。

ラッカーゼを用いたフェノール類の酸化反応

 ラッカーゼは,フェノール部分を特異的に認識して酸化し,生成したフェノキシルラジカルを自発的に重合させることにより,フェノール系化合物を無毒化します。酸化剤としては水中の酸素を用いますので,類似のペルオキシダーゼによる酸化反応に用いられる有毒な過酸化水素は不要です。現在のところ,環境ホルモン(ノニルフェノール,合成エストロゲン)などの無毒化に成功しています。また,メトキシフェノール類を酵素酸化重合することにより,有機溶媒やホルムアルデヒドを用いないフェノール系高分子材料の合成にも成功しました。

ラッカーゼによるリグニン様高分子材料の合成
 
酸化酵素ラッカーゼと水中の溶存酸素を用いたメトキシフェノール類の酵素酸化重合により,
植物中のリグニン(右下)と類似したフェノール系高分子材料が合成できます。

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